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子どもたちの教育費用や老後への準備も忘れずに

住宅ローンの返済は20年、30年の長期にわたります。その間には、さまざまな変化が起こります。子どもたちの成長といった想定内の事態から、会社の業績悪化による収入ダウン、リストラなどの想定外の事態もあるかもしれません。そのうち、想定できる可能性だけは事前に十分に検討して、住宅取得時にある程度は折り込んでおく必要があります。最大のポイントは子どもたちの成長に伴う教育費の増大でしょう。まだまだ小さいうちであれば、将来の進学に備えて学資保険に加入して積立てを進めるなど、それなりの配慮が不可欠。住宅ローンのために、子どもの将来の選択肢を狭めるのは本末転倒です。では、実際にどれくらいかかるのでしょうか。

これは、高校から大学までの7年間にどれくらいの学費がかかるかを調査したものです。高校卒業までの3年間で338万円ほどかかり、大学に入るとなると、さらにふくらみます。高校から大学までの7年間を通算すると、合計1032万円ほどになる計算です。もちろん、進路によって必要な学費は異なります。高専・各種学校や短大であれば700万円台ですが、四年制の大学となると、運良く国公立に進んでくれたとしても854万円かかり、私立の文系で1016万円、私立理系だと1141万円に達します。二人の子どもを大学まで通わせるためには、中古住宅なら一件手に入るぐらいの負担になります。地方都市にお住まいの方であれば、子どもたちの進学先が東京や大阪・京都などになることも少なくないでしょう。

そうなると、家賃や食費の負担も出てきますから、親の年間の負担は200万円を超えるといったデータもあるほどです。それは家計にズシリと重くのしかかってきます。住宅ローンの返済をかかえながら、子どもの進学費用まで負担するとなると、これはもうたいへん。2012年度の平均で、51・4%と住宅ローンと在学費用の合計が年収のほぽ半分を占めています。50%どころか、60%以上という家庭も21・8%を占めているのです。先にふれたように学資保険などで必要な学費のある程度を確保できるような準備を進めておく、もしくは子どもたちにお金がかかる時期には住宅ローンの返済を終えておくといった対応が考えられます。

年齢の関係から、進学時期までに返済を終えられない場合であれば、ローンを二本立てにして、そのうち一本だけ返済期間を短くして、進学時の負担が軽減されるような対応もあり得るでしょう。自分たちの家計や将来設計などに応じて対策を講じておいてください。教育費の心配と同時に、その先の老後への準備も大切になってきます。生命保険文化センターの一般消費者を対象にした調査によると、老後の生活に必要な最低限の生活費として月額23・3万円、ゆとりある生活には36・6万円が必要という結果が出ているそうです。会社員であれば、厚生年金によってそのうちのある程度の部分は確保できるでしょうが、自営業などで国民年金だけの場合には、現状でも月額6万円台。年金財政の厳しさを考えると、今後はそれもどんどん減っていくことになるでしょう。

結果、家計を切り詰めるだけではやり繰りがつかず、貯蓄を取り崩しながら生活するといった事態が避けられません。ですから、リタイアする年までには住宅ローンの返済を終えておくことが重要になってきます。定年退職金やそれまでの貯蓄は老後への備えとして確保しておかなければならないのです。仮に、年金のほかに月額10万円の生活費が必要とすれば、10年で1200万円、20年なら2400万円、30年だと3600万円に達します。20万円ならその2倍ですから、これはもうたいへん。シッカリとした備えが欠かせないのです。これは、世帯主の年代別にいくらの支出を行っているかを調査したものです。

50歳代までは月額30万円近い支出が、60歳代になると25万円ほどに減少し、70歳代では20万円ほどになります。高齢になるほど家族数が少なくなり、衣料費やレジャー費などの支出は減るでしょうが、食費はそうそう削れません。そのため、支出に占める食費の割合を示すエングル係数は60歳代、70歳代と高まっていきます。それだけ生活にゆとりがなくなっていくことを意味します。そんな寂しい老後にするのか、たまには夫婦で温泉旅行に出かけたり、孫やひ孫にお小遣いのひとつも渡して、頼りがいのある祖父母になるのか、それも準備しだいです。住宅取得計画に当たっては、そんな先のことも考えておきたいものです。

ローン減税や光熱費の減少なども見据えながら家計の変化を考える

住宅を購入すると、新居での生活はこれまでの住まいとさまざまな面で違ってきます。新築住宅なら居住性能が大幅にアップし、より快適に、安心して生活できます。生活にかかる費用にも変化が出てきます。特に、最近のスマートハウスと呼ばれる省エネ性能の高い住まいだと、光熱費の負担が大幅に軽減されます。それは、10年前の新築住宅とは比べものになりません。大手住宅メーカーのスマートハウスでは、住まいそのものを高断熱、高気密化すると同時に、太陽光発電システムや燃料電池(エネファーム)などの創エネ設備、家庭用リチウムイオン電池などの蓄エネ、そして家庭用エネルギー管理システム(HEMS)などが標準装備されるようになっています。

これによって、年間の光熱費は大幅に削減されます。セキスイハイムの調査によると、太陽光発電システムを設置した家庭の多くが、光熱費ゼロを達成しています。一般家庭の標準的な設備といわれる4キロワットでも7割前後が光熱費ゼロで、それ以上の容量の大きい太陽光発電システムを設置した住まいでは、電気代支払い額より余剰電力売電による収入のほうが多い家庭もあります。これは、太陽光発電システムで発電した電気のうち、家庭内で使い切れない電気を電力会社に買い取ってもらう、買取制度が実施されているためです。

2012年度に設置した人の買取価格は1キロワット時当たり42円で、今後は引き下げられる予定ですが、それでも光熱費の大幅削減が可能であるのは変わりません。 たとえば、標準的な家庭だと年間の光熱費は二十数万円に達するそうですが、スマートハウスでは、太陽光発電などによって年間の電力消費が減少し、電力会社への支払いは数万円程度に抑えることができます。さらに、余剰電力の買取制度によって年間数万円の収入が入るので、通算するとゼロになるか、むしろ収入のほうが多くなるケースもあるわけです。この光熱費の削減を住宅ローンの返済に回すといった考え方もできます。

たとえば、年間24万円かかっていた光熱費がゼロになるとすれば、月間ベースでは2万円の余裕が出てきます。それを住宅ローン返済に回せば、借入可能額は格段にアップします。先にみたように、住宅ローン減税制度によっても所得税・住民税の一部または全額が戻ってくる制度もあります。住宅購入前と購人後で生活の収支にどんな変化が起こるのか、事前にシッカリとシミュレーションして、資金計画や返済計画に加味すれば、購入可能予算のアップなどによって物件の選択肢が広がる可能性があるわけです。

現在の家計をチェックして自分たちの安心な資金計画を確認

より安全な返済計画を立てる上では、返済額の上限を現在の家計実態から算出する方法も考えられます。住宅取得後のローン返済額を、現在の家計から支出可能な範囲に抑えるという考え方で、これが家計の実態に即した、最も安全な返済計画といってもいいかもしれません。家計の実態に応じて、まずは現在の住宅関連の支出を計算します。賃貸住宅住まいの人であれば、家賃や共益費があります。クルマを持っている人なら、駐車場料金の負担や住宅取得資金としての貯蓄額を加えます。ただし、貯蓄額については、住宅取得後も継続すべき貯蓄があります。子どもの教育費のための支出、比較的年配の人であれば、老後への備えなどもあるでしょう。それらは、除いて計算してください。そうしないと、住宅購入のために子どもの教育や老後の生活に影響が出てきます。

これを①とします。住宅購入後の住宅関連の支出をこの範囲内に抑えることができれば、現在と同じ生活を維持することができます。注意していただきたいのは、住宅購人後の住宅関連の支出は住宅ローンだけではないという点です。住宅ローン以外にも、マンションであれば管理費や修繕積立金の支出がありますし、クルマを持っている人なら駐車場料金の負担もあります。さらに、固定資産税や都市計画税などの税負担も出てきます。これらを月額ベースで計算してください。固定資産税などは実際に建物が完成してから市区町村が決定するので、新築だとまだ決まっていないのですが、販売会社なら概算でどの程度になるのか、ある程度の目安をつけられるはずです。必ず、事前に確認しておきましょう。

この合計を②とします。反対に住宅ローンを利用すれば、ローン減税制度によって所得税・住民税が控除されます。これも月額ペースで算出して③とします。住宅取得後にローン返済に充てられるのは、①から②を引いて、③を加えた金額ということになります。これを④とします。この④の範囲に毎月の返済額を抑えることができれば、現在の生活レベルを維持したままで、新居での生活を送ることができるわけです。その範囲でどれくらいの住宅ローンを組むことができるのでしょうか。そのためには、あなたが利用できる住宅ローンの100万円当たりの返済額を見つけてください。金利2%、35年返済なら3312円という数字が見つかるはずです。これを⑤としましょう。以上の流れをあなたの家計に合わせて試算してみてください。たとえば、①、②、③と数字を当てはめていき、毎月の住宅ローン返済の限度額である④が10万円になったとします。さらに、100万円当たりの返済額である⑤が3312円だとすれば、10万円を3312円で割って、それに100万円を掛けた数字が、あなたの借入限度額という計算になります。

この場合には、3010万円ということです。図として書き込み用の図表を用意しておきました。実際に皆さんの条件を当てはめて計算してみてください。これに、用意できている頭金を加えて、その範囲内で物件を探してみましょう。希望のエリアに、その予算内でこれはという物件が見つかれば一番いいのですが、難しい場合には、エリアを変えてみる、住宅の形態を変えてみるといった方法も考えられます。同じ都市圏でも、住宅の価格は随分と違っています。同じエリア、同じ広さでも、中古住宅ならやはり新築に比べてかなり安く手に入れることができます。その分、入居前にリフォームすれば、新築に近い居住性を確保できます。そのリフォーム費用を加えても、新築よりはかなり低い予算に抑えることができるはずです。さまざまな可能性を考えてみてください。

返済負担率は25%に抑えるのが長い返済生活に耐えるポイント

住宅ローンを利用するときに忘れてはいけないのが返済負担率を一定の範囲内に抑えるという点です。返済負担率というのは、年収に占める年間返済額の割合のことで、これがあまり高くなるとローン破綻のもとになります。金融機関でも、住宅ローンの審査に当たってはこの返済負担率をチェックしています。年収400万円未満なら30%までで、年収400万円以上は35%までとしているところが多いようです。しかし、年収400万円で、その35%を住宅ローンの返済に回さなければならない生活はどんなものでしょうか。400万円の35%といえば140万円。手元に残るのは260万円です。通常、税込みの年収で判断しますから、手取りで考えれば、200万円ちょっとしか残らないでしょう。これでは、生活はかなり厳しいものになってしまいます。

そう考えると、返済負担率は上限でも25%に抑えるのが無難。理想でいえば、20%程度にとどめておきたいところです。特に育ち盛りの子どもがいる場合、今後は食費や教育費などの支出が増えるので、できるだけ低くしておくべきでしょう。住宅金融支援機構の調査によると、フラット35を利用して住宅を取得した人たちの多くも20%前後をメドにしているようです。全国平均では、注文住宅で20・7%、土地付注文住宅が24・4%、建売住宅が22・8%、新築マンションが21・3%、中古一戸建てが18・8%、中古マンション18・2%などとなっています。首都圏や近畿圏など、価格相場が高いエリアでは返済負担率が若干高くなる傾向がみられますが、それでも上限は25%台で、30%になることはありません。やはり、25%を上限とするのが無難でしょう。

では、その範囲に抑えるためには毎月返済額をどの程度にすればいいのでしょうか。年収400万円でみれば、返済負担率25%なら年間の返済額の上限は100万円。12か月で割れば、毎月返済額の上限は8万3333円になります。金利2%、35年返済のローンであれば、借入可能額は2660万円。金利1%、35年返済だと2950万円です。頭金500万円なら3000万円から3500万円程度、頭金1000万円なら3500万円から4000万円程度の物件まで手が届く計算です。これが年収500万円になれば、返済負担率25%で年間125万円、毎月10万4166円までOKということですから、金利1%なら3690万円、金利2%なら3140万円が借入額の上限になります。頭金が1000万円あれば、4000万円台前半から後半ま
で射程範囲が広がります。

親の援助などをフルに活用して自己資金を増やす努力を

頭金に諸費用を加えて、購入価格の25%から30%の自己資金が望ましいといっても、3000万円の物件なら最低でも750万円、4000万円なら1000万円が必要になります。ジックリと時間をかけて自己資金づくりにいそしむのが本筋です。月々10万円の貯蓄なら年間で120万円、ボーナス時に40万円ずつ加えたとして、年間で200万円。4年から5年程度かければ、何とか目標を達成できそうです。月々15万円、20万円と貯蓄を増やせる人であれば、さらに短縮できるでしょう。それにしても一定の年月が必要になります。しかし、現在の低価格、低金利で住宅を取得できる期間はさほど残されていません。1年か2年後には本格的に景気が回復して、価格や金利が大幅にアップしている可能性があります。

せっかく自己資金を増やしても、そうなってしまっては、今頭金ゼロで買うよりも、むしろ負担が重くなってしまうかもしれません。そこで、考えたいのが生活の見直し。家計管理を一段と強化して、少しでも早く自己資金をつくる。また、家計の資産の見直しも重要。たとえば、生命保険に複数加入しているのであれば、住宅ローン利用時にはそのうちひとつは解約してもいいかもしれません。住宅ローンには、団体信用生命保険がついていますから、住宅ローン残高と同額の生命保険に加入することになります。ですから、それに相当する保険をやめてもいいわけです。解約すれば、一定の返戻金が戻る保険なら、それを自己資金として活用できますし、保険料の負担が減ることで、ローン返済にもゆとりが出てくるかもしれません。さらに、両親や祖父母などから援助を仰ぐことはできないでしょうか。

親子の間柄であっても、年間110万円超の贈与を受けたときには、贈与税の負担が発生しますが、現在は住宅取得資金としての贈与については一定額まで非課税となる特例が実施されています。2013年に贈与を受けた場合には、最高1200万円、2014年の贈与だと1000万円まで非課税になります。2013年の贈与なら、年間の基礎控除110万円を加えて、1310万円まで非課税になるのです。20歳代、30歳代の人だと3割以上の人がこの特例を利用して援助を受けています。この特例がないと、1310万円の贈与に対しては375万円の贈与税がかかり、手元に残るお金は1000万円を切ります。それが全額自己資金として活用できるのですから嬉しい限りです。住宅取得計画を立てるときには、両親、祖父母などと相談してみてはいかがでしょうか。

頭金は2割以上用意するのがラクな返済、安全な家計につながる

マイホームを取得するためには、頭金が必要といわれますが、民間ローンでは、安定収入のある人であれば、購入費用全額のローンを組むことができる場合があります。これなら、頭金はゼロでマイホームを手に入れることができます。また、フラット35でも、購入費用の9割までの融資が可能なので、1割の頭金を用意すれば、OKということになります。しかし、そんなに頭金が少なくては、それだけ借入額が増えて、借入後の返済がたいへんです。できるだけ頭金を多くしておきたいものです。たとえば、4000万円の建売住宅を全額ローンで購入すると、金利2%、35年返済では毎月の返済額が13万円台に達します。

年間では約160万円、35年間の総返済額は約5565万円にもなるのです。頭金を1割用意して、借入額を3600万円に減らすことができれば、同じ条件で計算すると、毎月返済額は12万円を切り、年間では約143万円に減少します。結果、35年間の総返済額は約5009万円です。400万円の頭金を用意することが、返済総額にすれば約556万円の差になります。400万円の頭金を除いても、約156万円トクする計算です。さらに、頭金を2割用意できれば、毎月返済額は10万円台にダウン、年間では約127万円、35年間の総返済額は約4452万円に減少。

800万円の頭金が必要ですが、総返済額は頭金ゼロに比べて約1113万円も少なくなります。800万円の頭金を差し引いても、313万円トクできるわけです。マイホームを取得するときには、できるだけ多くの頭金を用意するのが得策です。単にトクできるというだけではありません。実は、頭金を多くしておくことは、購入後の安心にもつながるのです。周知のように、新築住宅は買ったとたんに価値が大幅にダウンします。一度でも人が住めば、築年数が浅くても住宅市場では中古住宅の扱いを受けますからこれは当然のことです。

もちろん、人気エリアの、いわゆるヴィンテージマンションなどのなかには、分譲時価格より高く売れるケースもありますが、それは極めて珍しい例で、通常は2割、3割と下がることになります。これは、マンションや二戸建ての成約価格が、築年数に応じてどのように変化するかを示しています。首都圏のマンションの場合には、新築から築5年までは4000万円近くするのが、築6年から10年で3600万円台に下がり、築11年から15年では3090万円に、さらに築16年から20年では2004万円になります。築20年近く経てば、価格は新築時の半値ほどに下がってしまうのです。