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低金利 を利用してマイホームを手に入れる

 2013年5月現在、長期金利は0%台後半で推移しており、低金利は変わりません。日本銀行の「異次元の金融緩和」が実施されていますから、当面は現在のような低金利が続くことになるでしょう。目先では、さまざまな思惑も入り、落ち着きのない動きになっていますが、それでも金利が急速に上昇に向かうことはないとみられます。しかし、中長期的な視点からみれば、金利は上昇に向かうはずです。金融緩和によって景気が回復に向かい、巡航速度に乗ってくれば、長期金利がジワジワと上昇を始め、短期金利も引き上げられます。それが1年後なのか、2年後なのか、見極めはなかなか難しいところですが、ひとつの指標になるのが物価上昇率の動きです。

これは、過去の物価上昇率と、優良企業向けの貸出金利である長期プライムレートの推移を示しています。高度成長時代やバブル期には両者の差が大きく開いていましたが、その後はほぼ2%程度の差で推移していることが分かります。銀行の預金金利もこの長期プライムレートと連動しています。物価上昇率がマイナスであれば、預金金利が0%台であっても、実質的には1・2%程度の利回りを確保できますが、物価上昇率がプラスになれば、預金金利も引き上げないと預金が集まりません。当然、長期プライムレートなどの各種金利も上がり、住宅ローン金利も同様の動きをみせることになります。

日本銀行では、2013年4月の『展望リポート』で、この物価上昇率の目標を提示しました。2013年度の平均で0%前後、2014年度の平均で1・5%前後とし、2014年度末、つまり2015年春には2%の目標を達成するというものです。日銀の公約通りに物価が上がっていけば、住宅ローン金利はどうなるのでしょうか。2013年度の平均で0%前後というのは、年度前半はマイナスでも、後半にはプラスに転じ、年度平均で0%前後ということです。それが2014年度の平均で1・5%前後となると、年度初めは1%程度の物価上昇率であったとしても、年度末には2%程度になっていないと年度平均で1・5%は達成できません。そのため、2015年春には2%にもっていくとしているわけです。そうなると、2015年春には、住宅ローンをはじ
めとする各種の金利も現在よりは2%程度上がっている可能性が高くなります。

仮にフラット35の金利が2013年5月の1・81%から2%上がれば、3・81%です。先にみたように、2012年の首都圏平均のマンション価格4540万円の物件を3500万円のローンを組んで買う場合には、1・81%の金利なら毎月返済額は11万2558円ですみますが、3・81%になると、毎月返済額は15万1007円に増えてしまいます。物価が上がるということは、住宅価格も高くなっている可能性があります。仮に、新築マンション価格が上昇、借入額を4000万円に増やさざるを得ないことになれば、毎月返済額は17万台に増加します。特に住宅ローン金利は、物件の引渡し後の融資実行時の金利が適用されます。大規模マンションだと販売開始から引渡しまでの期間が長いので、いまの低金利を利用してマイホームを手に入れるためには、さほど時間が残されていないといっていいでしょう。

20年、30年と返済が続くだけに中長期的な視点でとらえることが大切

2013年5月現在、住宅ローン金利は史上最低水準で推移しています。メガバンクをけじめとする多くの金融機関では、変動金利型の店頭衣示金利は2・475%。過去には2・375%の時期がありましたから、その点だけでみれば、史上最低とはいえませんが、2・375%のときの金利引下げは0・4%程度で、実質金利は2%前後にとどまっていました。しかし、現在は金利引下げが1・6%に及び、0・875%で利用できるようになっているのです。実質金利でみれば、史上最低であるのは間違いありません。固定期問選択型の固定期問10年をみると、店頭表示金利は3%台ですが、これも大幅な金利引下げによって1・40%から利用できます。

1年前までは2%前後でしたから、こちらもやはり実質金利では史上最低といっていいでしょう。さらに、全期問固定金利型の代表格ともいうべきフラット35の金利が2013年4月には、返済期間21年~35年で最低金利が1・80%と過去最低を記録しました。その後は、若干上昇しているものの、依然として過去の水準からみれば、かなり低いレベルであることは間違いありません。この史上最低の金利を利用すれば、借入可能額がアップし、ひと回りもふた回りも大きな家、より便利な場所にある住まい、グレードの高い住宅が手に入ります。

また、同じレベルの住宅で比較すれば、数年前より住宅ローン負担は格段に軽減されます。たとえば、不動産経済研究所によると、5年前、2008年の首都圏新築マンションの平均価格は4775万円でした。自己資金が1000万円ほどあるとして、3700万円の住宅ローンを利用して買ったとしましょう。全期間固定金利型のフラット35の金利は、2008年5月には3・05%でしたから、毎月返済額は14万3129円になります。それが、現在はどうでしょうか。新築マンションの平均価格は2012年の平均で4540万円。やはり自己資金が1000万円ほどあるとして、3500万円を金利1・81%のフラット35で借りると、毎月返済額は11万2558円にダウンします。

ほぼ同じレベルの住宅を手に入れるにしても、毎月返済額は何と3万円以上少なくなるのです。仮に、5年前と同じように、14万円台まで負担できるとすれば、金利1・81%なら、借人可能額は4450万円にアップします。自己資金1000万円を足せば、5400万円合のマンションを手に入れることができます。より便利な場所に、ひと回り広い住まいを手に入れることも可能になるはずです。住宅ローンを利用してマイホームを手に入れるのなら、まさに「今でしょ」ということになります。

「自己責任」意識の欠如が借入後のローン事故につながる

住宅ローンの利用には、「自己責任」の意識の確立が不可欠です。前項までにふれたような、住宅ローンのリスクを十分に理解し、一定の対策を立てた上で借り入れるようにしなければなりません。それがないまま、「いまが買い時」「今でしょ」といった勢いだけでローンを借りてしまうと、たいへんなことになりかねません。住宅ローンの返済は20年、30年と続きます。その間には、どんな変化が起こるか分かりませんし、さまざまな事態を想定しておく必要があります。たとえば、変動金利型などを利用した場合には、金利が上昇して返済額が増えても問題がないか、また小さな子どもたちがいる家庭であれば、教育費支出が増大しても家計を無事に回していくことができるかなどをシッカリと確認しておきましょう。

現実には、それができていないまま住宅の購入、ローンの借入れを実行した結果、ローン返済に行き詰まって、にっちもさっちもいかない困った事態に陥っている人が少なくありません。住宅金融支援機構のフラット35や、前身である住宅金融公庫の融資を利用している人のうち、返済に困って条件変更などの相談をした人、その結果条件変更の特例の適用を受けた人の件数の推移を示しています。2000年代の初頭には年間で20万件から30万件台の相談があったのが、最近は10万件台に減少しています。しかし、それでもまだまだ高い水準といわざるを得ません。

しかも、相談しても、実際に返済方法変更の適用を受けて、一時的に返済額を減額するなどの特例の適用を受けられた人は、2011年度は年間1万件以下にとどまっています。住宅金融支援機構は半公的な機関ですから、民間に比べてさまざまな特例が用意されているのですが、誰でもそれを利用できるわけではありません。業績不振やリストラなどで収入が大きくダウンしたなどの事情がない限り、特例の適用を受けるのは簡単ではないのです。そうなる前に、シッカリとした返済計画を立てておく必要があります。

民間でも、「中小企業金融円滑化法」に基づき、住宅ローン利用者の返済猶予などの対応がとられるようになりました。法律自体は、2013年3月末で期限切れとなり終了しましたが、金融庁によると、2012年9月末段階で全国の金融機関に対して約34万件の条件変更などの申込みがあり、約27万件が返済期間延長による返済額の減額などの実行に至ったそうです。しかし、返済猶予といっても債権放棄などで返済をチャラにしてくれるわけではありません。あくまでも一時的な軽減に過ぎません。その点をシッカリとわきまえて計画を立てたいものです。

変動金利型には未払い利息発生のリスク

変動金利型は、借人後に金利が上がると、6年目からの返済額が最大では25%まで増えるのですが、実は、それよりも、もっと恐ろしい事態もあり得るのです。それが、”未払い利息”の発生です。あまり耳慣れないコトバかもしれませんが、約定通り返済しているのに、元金がまったく減らないどころか、逆に、実質的に元金が増えてしまうことを意味します。どういうことなのでしょうか。図をご覧ください。3000万円、金利0・875%、35年元利均等・ボーナス返済なしで利用した場合、当初の返済額は8万2949円です。これは、5年間変化しません。しかし、この5年の間に金利が変化すると、それに応じて適用金利も見直されることになります。返済額は変わらないのですが、金利が上昇すると、毎回の返済額のうち元金分か減少し、利息分か増加します。元金がなかなか減らない状態になるのです。

反対に、金利が下がれば、返済額のうちの元金分か増えて、利息分か減少、元金の減り方が早くなります。大きく金利が上がった場合には、毎回の返済額がすべて利息分に充てられ、元金はまったく減らないといった事態が起こり得ます。むしろ、毎回の返済額が利息分にも足りず、利息が積み増しになることもあります。それが未払い利息ということです。図のケースでみると、借入れから1年が経過した時点で、金利がまったく変わらない場合、13回目の返済額8万2949円のうち、元金分は6万1611円で、利息分か2万1338円になります。それが、金利が1%上がると、利息分は4万5725円に増え、逆に元金分は3万7224円に減少します。

さらに、2%上がると、利息分は7万112円に増え、元金分はわずか1万2837円に減ってしまうのです。3%上がった場合はどうでしょうか。利息分だけで9万4498円と、毎月返済額の8万2949円を上回ってしまいます。この不足分の1万1549円が、未払い利息ということです。毎月、キチンと約束通りに返済しているのに、実際には毎月1万円以上残高が増えてしまう状態といっていいでしょう。この未払い利息は5年ごとに精算することになっています。現金で支払うことができればいいのですが、そうでない場合には、6年目からの返済額の計算時に、未払い利息を加えた額を元金として算出することになります。背筋が寒くなるような事態ですが、いったいどれくらい金利が上がると未払い利息が発生するのでしょうか。

それは、毎月返済額をその時点のローン残高で割って、12か月を掛けて求めることができます。このケースでみると、毎月返済額が8万2949円で、12回終了時の残高は2926万4161円ですから、図にあるように3・4%がボーダーラインになります。適用金利が3・4%以上になると、未払い利息が発生します。当初の金利が0・875%ですから、2・5%ほど上がると未払い利息が発生するという計算です。未払い利息が発生しないまでも、金利が上がると、返済額に占める元金の割合が小さくなり、返しても、返しても、なかなか元金が減らない状態になります。これからは、後に詳しくふれるように、金利が上がる可能性が高いのですから、十分に注意しておきたい点です。

しかし、実際に、こうした金利上昇リスクを理解していない人が少なくありません。住宅金融支援機構の調査によると、いまみてきたような「適用金利や返済額の見直しルール」を、「十分理解」「ほぼ理解」しているという人は、合わせて62・9%。ある程度の人は理解しているのですが、「理解しているか不安」「よく理解していない」「まったく理解していない」と回答した人も37・1%に達しています。また、「将来の金利上昇に伴う返済額増額への対応策」については、「理解しているか不安」「よく理解していない」「まったく理解していない」の合計が47・7%になっています。半数近くの人が、具体的にイメージできていないことになります。良心的な担当者であれば、変動金利型のこうしたリスクについてもある程度説明してくれるはずです。

それをシッカリと聞いて、十分に理解しておくようにしましょう。できれば、借入後に金利が1%上がったときにどうなるのか、2%上がったときはどうかなど、具体的に試算してもらうのが安心。その場合、返済中の元金と利息分の割合がどう変化し、6年目からの返済額がどうなるのかなども確認しておきましょう。最近は、金融機関や住宅金融支援機構のホームページなどに、住宅ローン計算のシミュレーターがついています。そこに自分たちの借入条件などを人力すれば、返済額をはじき出すことができるようになっています。時間をみて、いろんな事態を想定しながら、自分たちの考えている住宅ローンについて、さまざまな面から検証してみましょう。

金利の低さだけで選んでいる人が大多数を占めるのが現実

住宅ローン選びを業者任せにした結果、どんなことが起こっているのでしょうか。住宅金融支援機構の調告から、借り入れた住宅ローンを選んだ決め手をみると、「金利が低いこと」が71・7%で断然のトップに挙がっています。それに、「住宅・販売事業者に勧められたから」が27・7%で続いています。つまり、業者のいうままに、金利の低いローンを利用しているといっていいでしょう。もちろん、前々項でふれたように、住宅ローンは金利が1%違うと、総返済額でみれば数百万円の差になります。0・1%、0・2%の違いでも決して馬鹿にできませんから、少しでも金利の低いローンを利用したいというのは、当然のことでしょう。しかし、それがたいへんリスクの人きいローンであればどうでしょうか。

住宅ローンには、主に三つの金利タイプがあります。ひとつが、変動金利型。市中の金利動向に応じて適用金利が変わるローンです。そうしょっちゅう金利が変わり、返済額も変わってしまうと家計への影響が大きいので、金利変化があっても、5年間は返済額を変えずに、5年に1回見直すことになっています。その際も、返済額が増える場合には増額率を25%までに抑えるというルールがあります。逆にいえば、6年目からは、返済額が最大25%まで増える可能性があるということです。たとえば、当初の毎月返済額が10万円であったとすれば、最悪の場合6年目からの返済額が12万5000円になってしまうのです。

金融機関からみれば、市中の金利変化に応じて適用金利を変えることができるので、常に一定の利ざやを確保できます。金融機関にとってはリスクがないわけで、その分金利を低くすることができます。2013年5月の金利は、店頭表示金利が2・475%ですが、金利引下げ制度によって実際には、メガバンクなどでは0・875%で利用できます。ふたつめが固定期問選択型。これは、当初の2年、3年、5年、7年、10年などの特約期間は金利が固定しています。その間に市中の金利が上がったとしても、適用金利が上がることはありません。固定期間が終わったときには、再び固定期間選択型にするか、変動金利に切り替えることができます。

原則的には、固定期間が短いほど金利が低く、固定期間が長いほど金利か高くなります。2013年5月の金利をみると、金利引下げ後の実質金利は固定期間2年が1%前後、10年が1・40%程度になっています。変動金利型には、返済額の増額率を25%に抑えるというルールがありますが、固定期間選択型にはありません。固定期問2年もので、その2年問で金利か大幅に上昇すれば、返済額が3割、4割と増えてしまうリスクがあります。固定期間の短いタイプは変動金利型と同じように、たいへん金利が低く、魅力があるのですが、その分リスクも小さくないということです。いまひとつが、全期間固定金利型。借入時の金利が完済まで変わらない金利タイプです。適用金利が変わりませんから、当然返済額も変化しません。利用者からすれば、返済額が変わることがないので、安心して利用できるローンといえるでしょう。

ただし、残念ながら、金利は変動金利型や固定期間選択型に比べると若干高くなります。全期間固定金利型の代表格ともいうべきフラット35は、2013年5月現在、35年返済を利用する場合で最低金利は1・81%になっています。以上の金利タイプを金利水準とリスクの大小で整理すると、図のようになります。変動金利型や固定期間選択型の固定期間2年、3年などは金利が低いのですが、その分、利用者からすると返済額増額のリスクが大きくなります。反対に、全期間固定金利型は、金利は若干高めになっているのですが、完済までの返済額が借入時に確定しているので、金利上昇によるリスクは小さく、安心して利用できます。固定期間選択型の固定期間10年は両者の中間に位置づけることができます。金利やリスクもほどほどということです。

リスクをとって、金利の低い変動金利型や固定期間選択型の固定期間の短いタイプを利用するか、リスクを回避するために、やや金利の高い全期間固定金利型をとるか、悩ましいところですが、実際の利用状況をみると、図のようになっています。2012年末までは、景気も回復しそうにないので、当面は低金利が続くだろうと考える人が多く、変動金利型の利用者が半数を超えていました。それが、2013年に入って様相が変わりつつあります。アベノミクスで、景気にほのかに明るさが見えるようになり、いずれ金利が上がるのではないかと考える人が増えているのでしょう。変動金利型の利用者がやや減少し、代わって固定期間選択型の利用者が増えています。変動金利型を利用していて、金利が上昇すると返済額が増えるのですから、これは当然の変化といっていいのではないでしょうか。

業者任せのローン選択ではローン破綻が待っている!

住宅購入後の生活を考えると、住宅ローンの影響がたいへん大きいのですが、そのローンを業者任せにしている人が少なくありません。いや、むしろそのほうが多いといっていいぐらいです。図は、住宅金融支援機構が、実際に住宅ローンを利用してマイホームを取得した人たちを対象に実施した調査の結果です。それによると、住宅ローン決定に影響が大きかった媒体などとしては、「住宅・販売事業者」が43・9%でトップに上がっています。多くの人が、極端にいえば業者の勧めるままに何の疑いもなく住宅ローンを利用しているといっていいでしょう。

しかし、考えてください。住宅販売会社は、住宅を売るのが最大の目的です。売ってしまえば、住宅に欠陥などの問題がない限り、もう買い手とは関係ありません。買った人がいくら住宅ローンに苦しもうが、最悪、ローン破綻に陥ろうが関係ありません。売りっぱなしでいいわけです。しかも、個々の営業担当者の立場を考えれば、売ることが自分の評価につながり、ひいては昇進・昇格や給与などに影響してきます。嘘をついてまで売るという人はそうそういないと思いますが、それでも、買い手にとっておいしい情報しか提供せず、マイナス情報にはダンマリを決め込むというのが普通でしょう。

住宅ローンには、金利タイプによっては、借入後の金利上昇により返済額が大幅に増加するといったリスクがあります。それにはほとんどふれずに、金利の低さだけを強調したりします。また、「うちの提携ローンはどこより安いですよ」といいながら、実は自分で探せば、それより低いローンの金利があったといったケースも珍しくありません。そんなセールストークに乗せられてはいけません。少なくとも、自分でもいくつかの金融機関を回ってみて、ほんとうにそのローンでいいのか客観的な判断を下せるようにしなければなりません。

少なくとも、不動産業者の話だけで決めるのではなく、金融機関の窓口などでも相談し、セカンドオピニオンを得ておくべきでしょう。先の調査では、その「金融機関」の影響が大きかったという人は15・7%にとどまっています。その他、「インターネット」でさまざまなローンをチェックした結果を重視した人も11・4%に過ぎません。これでは十分に自己責任を果たしているとはいえません。借入後に「こんなはずでは」と後悔するのがオチです。ファイナンシャルプランナーなどの専門家への相談は有料になることが多いのですが、金融機関での相談は無料ですし、周辺で購入経験のある人に話を聞くなどの努力を行っていただきたいものです。